ベトちゃんドクちゃんのことをあなたはご存知でしょうか?
日本では80年代から90年代初頭にかけて、広くニュースで取り沙汰されました。
生まれながらに身体の臓器を兄弟で共有しなければならない、双子の兄弟
ベトちゃんドクちゃんは、上半身は2つあるけれど下半身は2人で1つという姿で、37年前のベトナムに生まれました。
ベトちゃんドクちゃんに下半身が1つ足りない原因は、ベトナム戦争。
ベトナム戦争時にアメリカ軍が枯葉剤を大量散布した地域こそが、ベトちゃんドクちゃんの出生地だったのです…。
ベトちゃんドクちゃんの場合は、上半身はなんとか離れているけれど、下半身は共有。
当然、肛門も生殖器も腎臓も一人分。
初めて彼らの映像を見た時、なんと残酷な運命を背負って生まれてきたのだろう!と気の毒でなりませんでした。
その時彼らは7歳。
活発に動くことなど出来ず、二人とも横になっていました。
世間では、彼らの分離手術をどうやって行うか、議論されていました。
特に日本赤十字社は積極的にベトちゃんドクちゃん分離手術に取り組み、話題になったものです。
分離したとして、両方助かるのか?
分離手術を受けたとして、ベトちゃんドクちゃん両方とも助かるの?
私の疑念はそのことでした。
二人同じように生を受けたのに、片方だけ助けてもう片方を見捨てるなんてことが許されるのか……。
でも、早く何とかしないと彼ら両方の命が危ういと言われていました。
兄のベトちゃんは、身体が弱そう
二人の繋がった映像を見ても、ベトちゃんはいつもぐったりし、ドクちゃんは元気にお茶目に振舞っていました。
臓器を共有しているのに、方や元気、方や病人。
同じ双子なのに境遇が違い、かわいそうだな、と思いました。
ベトちゃんドクちゃんの分離手術が行われた
ベトちゃんドクちゃんのような双生児は結合双生児というのだそうです。
私はなぜか、もっと昔から、シャム双生児という言葉を聞いたことがありました。
タイのシャムという村で、結合双生児が生まれた時に、そういう呼ばれ方をしたのでょう。
こういうケースは決して珍しいことではないそうです。
ベトちゃんが急性脳症になってしまったことをきっかけに、このままでは両方が危険だということでついに分離手術に踏み切ることになりました。
弟のドクちゃんは術後元気になり、障害児の学校から始め、成長して社会人となりました。
一方、兄のベトちゃんは寝たきりの生活のまま、26歳という若さで亡くなったのだそう…。
ベトちゃんの運命にはやり切れないものを感じますが、ドクちゃんの運命が開けていくことには、希望が感じられます。
生まれてきて結局一度も自由に歩き回れなかったベトちゃん。
26年間何を考えて生きていたのだろう…。
今ドクちゃんは病院で働きながら、家族も持った!
新聞で読んだのですが、現在のドクちゃんは、結婚してかわいい子どもたちもいるのだとか。
ベトナム戦争で枯葉剤が使われて、おそらくその影響で彼らの母は結合双生児を産むことになったのでしょう。
枯葉剤というのは、原爆とかと同じように、使われた後何年も土壌に残るそうです。
その枯葉剤のせいで、彼らの運命は大きく狂わされてしまったのです。
兄は私の中で生きている!
ドクちゃんは現在37歳。
分離手術後30年の今、何を考えますか?という記者会見での問いに、彼はこう答えています。
[兄は私の中で一緒に生きている]
戦争の被害者面をするでもなく、手術をしてくれた医師たちに、薬や医療物資を提供した日本に、そして兄に感謝するドクちゃん。
数奇な運命に負けないで、これからも幸せに暮らしてほしいと思います。
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