大好きなことを辞めるのはものすごく決断と覚悟が必要です。
そして再開するのは、おそらく辞める何倍も決意と覚悟が必要でしょう。やり切れるだけの覚悟が自分にあるのか、見極めるのは本当に難しいに違いありません。
本日は1度氷上を去ってまた戻ってくるという稀なケースで、私に感動を与えてくれたフィギュアスケーターのお話です。
今年7月に復帰を表明した高橋大輔さん
高橋大輔選手復帰のニュースを聞いた時、私は嬉しい気持ちと心配な気持ちが半々でした。
ニュース当時の心境はこちらの記事に書いています。
32歳といえば、スポーツ選手としては決して若くはありません。
周りで活躍しているフィギュアスケート選手はみんな20代か10代。今や日本のフィギュアスケート界は、羽生結弦選手や宇野昌磨選手が大活躍しています。完全に世代が交代しているのです。
しかも、5年の間にはフィギュアスケートのルールや技も大きく変わっています。
高橋選手が現役だった頃はまだ男子のフィギュアスケートで4回転ジャンプはほとんどなく、公式試合でも跳ぶ選手はあまりいませんでした。しかし今では男子は4回転を跳ばないと不利なくらいの、選手にとってとても過酷な状況になっています。
熾烈な競争のフィギュアスケート界に戻ってきた高橋選手
5年という年月はあまりにも長く、遠ざかっていた高橋選手にとっては、浦島太郎の心境だったことでしょう。
熾烈な競争社会に敢えて戻ってきた高橋選手の勇気に私はまず敬意を払いたいと思います。現役に戻るということは、体力と精神的の限界に挑むということなのですから。
しかも復帰を表明してまもなく、練習中に肉離れを起こし、練習できない期間もあったのだとか。
誰もが目指す全日本フィギュア選手権
全日本フィギュア選手権。目指しても誰でも辿り着けるわけではありません。
全日本の前には、地方のふたつの大会をクリアする必要があります。
高橋選手の場合は所属先が関西にあるので、まず最初に近畿大会で勝ち残ること。そして次が西日本大会。
ふたつの大会は、どちらも若手の登竜門のようなもの。一度引退した高橋選手は、他の若手新人と同じ扱いになってしまうのだそうです。過去にどんなに素晴らしい実績があろうとも、全てリセットされてしまうのですね。厳しい世の中です。
5年のブランクを物ともせず這い上がった高橋選手!
ところがなんと、高橋大輔選手は二つの大会をクリアして、全日本にまで辿り着いたのです!
5年というブランクはどんなにか大きかったことでしょう。
1年でも休むと元の調子を取り戻すのが大変なのに、5年です。
しかも年齢は27歳から32歳に。体力の衰えや身体の鈍りも大いにあると思います。
それらに加え、戦う相手はみんな10代。疎外感はもちろんのこと、ここで勝ち残れなかったら…、というプレッシャーも強かったに違いありません。
全日本選手権男子ショートでの高橋大輔選手の演技
ショートで1位の宇野選手に続く、2位という素晴らしい成績で、彼は大喝采を得ました。
久々に見た高橋大輔選手の演技は、静かな曲に乗っての丁寧な滑り。力強く勢いのある若い選手たちと違い、とても繊細で細やかな動きがあちこちにありました。
ショートでは4回転ジャンプは見られませんでしたが、フリーでは取り入れるそうです。最近の4回転ジャンプばかりが喝采を浴びる風潮である今、高橋選手のような4回転なしの演技でここまで魅了するのは本当に大したものだと思います!
滑り終えた後の高橋選手の幸せそうな笑顔
観客のスタンディングオベーションもすごかったですが、彼の笑顔も最高でした。後のインタビューで、リンクの上にはずっと居たいと思った、と。
やはり彼にとってフィギュアスケートは人生そのものなのでしょう。
フリーの演技も期待されるところですが、どうか怪我をしないように頑張ってほしい。かつてレジェンドと呼ばれた高橋選手は、今また現役としてファンを魅了しています。
今日本のフィギュアスケート界には、本当に素晴らしいスケーターがいっぱい。
羽生選手、宇野選手、そして、高橋選手。
できるなら、この調子で世界選手権にも進んでほしい。
高橋選手の姿は、私たちみんなに勇気を与えてくれます。頑張れ!高橋選手!応援しています。
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